アルジェントで破産しそう



先日こんな写真を見つけました。
ウワァオ!
Profondo Rosso(1975)リリース時のスナップでしょうね。
ど真ん中はもちろん、ダリオアルジェント。その右に手を繋いで微笑んでいるのがダリアニコロディ。ダリオの左側がおそらく、ジョルジオガスリーニ、この作品の元々の音楽担当の作曲家。←訂正します。マウリツィオグアリーニでした。プロフォンドロッソを録音した後、LIVE&ツアーのためにゴブリンに加入したとのご本人の弁です。
スミマセン、不埒なプログレファンなのがバレちゃいましたね。
そして取り囲むのがゴブリンのみなさん。
左から、この作品でどんだけこの人のベースラインを聴いたでしょうのファビオピニャテッリ、スーパー手数王ドラマー萬五郎、あいや、アゴスティーノマランゴロ、一番右端が、サスペリア同様「ヤな」メロディメイカーのクラウディオシモネッティ、その左が、昨年惜しくも亡くなった、切れ味鋭いギターのマッシモモランテ。
類稀なる傑作を生み出した面々勢揃いでございます。

こちらも同日と思われるダリオとダリア。
先の写真もそうですが、ダリアはこぼれるくらいの笑顔です。
なんでだと思います?

イイ歳こいて古のマニアックなムーヴィスターのへの憧憬を今更ムンムンさせてとお嗤い目さるな。

この作品、Profondo Rosso(日本では「サスペリアpart2」)でダリアはダリオと出会い、作品では抜群の存在感を示し、
あ、そうだ。今更というか何度も書いたかもしれませんが、日本の2時間ものサスペンスの原点、原典、パクリの元はこのProfondo Rossoなのは言うまでもないみなまで言うなの周知でございます。ちょっとポーッとしてる主人公をぐいぐい引っ張って事件の深みに誘う快活な女主人公。
ほらね。
閑話休題、

何故にこんな笑顔かといえば、ただならぬ感性を持つ女優が、その類稀なセンスを具現化する魔術師たる監督ダリオと出会い、シッポリ行きつつ、幼い頃から興味や親しみを抱き続けてきた魔術、魔女の世界を次回作、世界的娯楽作品「サスペリア」として世に放つという光明が見出せたと感じているからなんでしょうね。きっとそうよ。

少々解説するなら、Profondo Rosso制作中は言い寄ってくるダリオをちょいと冷たくあしらいつつも、ダリアの祖母が通っていたのが、その昔は魔術と舞踏と音楽を教える学校であり、その手の話を幼心にとっぷり刻み込まれたのを打ち明け、ダリアとダリオが2人して魔女伝承等をヨヲロッパ各地に取材して作り上げた物語が「サスペリア」なんですな。
つまり、前回お話しした「瞬き針責め」が「オペラ座血の喝采」の着想であるなら、ダリアニコロディが少女時代に育んだファンタジーが「サスペリア」制作のモチーフであるということです。

「サスペリア」の世界観をよく不思議の国のアリスに例える向きもありますが、もちろん、主人公が見たことも聞いたこともない世界に迷い込む(魔女信仰、建物の色彩に装飾、異形の召使い、アリダヴァリ)のはそうでしょうが、少女世界、もっといえば、日本の少女漫画的要素が展開されてることが、この作品に一貫して流れているテイストでありましょう。
学校内の閉じられた生活、壁に描かれた花々や紋様=ファンタジックな背景、事件や悲劇、主人公が無理やり疑心暗鬼に囚われるべく耳元で囁く級友(おお!suspiria=囁き)、して結局解決するのは主人公のピュアな感性... 
むゥう、まさにではないか!! では音羽さんはどの登場人物?

真ん中の主人公スージーと左のサラを、"S"から始まる名をもつあんた達は"Snake"=蛇なのよ!とのたまう右のオルガでしょうか。
でも結構親切だし、上履きに画鋲入れたり、お前のテニスは竜崎のマネだ!とか言われて利き腕壊して急にしおらしくなったりしちゃうわけでもないし... んー、でもナイスキャラですよね。

ちなみに左のサラは、ポスターになってる人です。

主役のジェシカハーパー(スージー)は下にちょこっと。
初期のアルジェントは、美人やかわい子ちゃんを綺麗に撮りますよね。キレイに撮るけどヒドイ目に遭わせるのがタマラんす。

ほらね。一番美人。

この左の最初にヒドイ目に遭っちゃう人もステキですよね。
一緒にえらいことになっちゃう右の人も、吹替が最高でした。もちろん、1979101日TV初回放送TBS系「月曜ロードショー」版の吹替えね。他の出演者にしても、あの頃はまだこんなに文化的な香りぷんぷんのナイスな台詞回しに言葉遣いだったんですね。
先の右側の、お腹に鉄骨がぶっ刺さり顔をステンドグラスで斜め切りされちゃう人始め、実に個性豊かな声の吹替声優陣(アリダヴァリはカツオの高橋和枝さん!)。ああ、再び巡り会えた70年代!胸キュンです。
こんな70年代テイストが、あー、日本語吹替も込みで話しますが、余計に少女漫画世界感をヒッシヒシと伝えてくれますこれも言ってみれば、世代を超えるミリキの所以といえましょう!
かくいうアルジェントも、ジェシカハーパー起用の理由として、目が大きくて日本の「マンガ」みたいだったからと、"manga"って日本語でインタビューで語っていたんですよ実際。ふむっふむっ!

大層興奮してきましたが、話をダリアニコロディに戻すと、「サスペリア」のお話しをアルジェントと書き上げたダリアは、主役を張る気満々だったとか(前作は準主役というか2枚看板ですからね)。
しかしアルジェントにより主演はジェシカハーパーに決定。年齢がその理由という噂もありましたが、ジェシカの方が1コ上なんですね〜。先ほどお話しした通り、ジェシカハーパーの持つ少女性を採用というわけですな。
してクレジットはありませんが、ダリアはオープニングの空港のシーンでカメオ出演。
この写真の左側の女性がそうです。

Profondo Rossoでは少々60s感が残る出立でしたが、こちらはグッとおしゃれな70年代カジュアルテイスト。そしてこの空港の人々の色彩がしかしまた...
やはり赤が目立ちますね。
この後のタクシーの車中もそうですが、ちょっとありえない様な照明の色彩が先ずは持って印象的。
前作Profondo Rosso(Deep Red)ではその名の通り"赤"がテーマでしたが、今作でも赤が結構なポイント(学校の外壁等々)で登場します。そしてもっとやりたい放題と化したアルジェント、ならば「テクニカラー」でしょと、往年のディズニーも使用していた、3原色をそれぞれ別のフィルムに記録するという、撮影当時すでに過去のものだった機材、それ用のフィルムを探してまで採用するといった色へのこだわり様。
赤もそうですが、緑色の照明が恐怖を煽ります。
個人的には"青"がイイ仕事していることにも最近気づきました。これは追々お話しします。
「幽霊が写ってる!」とか言われる様になった、アルジェントノリノリでこっそり登場のシーンも"青"でしたね。

ではアナタは初期アルジェント作品のことを滔々と語りたくてこんな長文書いてるわけ?

まぁそれもそうなんですが、前々から言っている、これら作品のソフト群について物申す、というよりも、色々また気付くこと多し、ってことー。
しかもおおっ!というニュースも飛び込んできましたからねー。
ではその端緒となったサスペリア1&2から。





これが長年我が家でのスタンダード、基準となるDVDなのでした。
そうそう、このBOXに入った1&2+ボーナスディスクといった構成。
何で箱が2つあるかというと、箱の中から1&2を知り合いに貸して、返した/返してないが繰り広げられ、ま、おそらく返してもらったがどこに置いたかわからないが正解なんでしょう、ならば手に入る内に買い直しじゃ!と箱とボーナスディスクが2セット。
あ、この箱、もはや伝説にもなってるこの仕様。


キョエ〜!(箱を触ってその部分が手の熱で/気温が上がると自然に、悍ましい光景があらわになる... )というのを10年くらい前のブログでもやった覚えがありますが、それほどスタンダードなんです、何が?
それは(E’ stat... It was…)その映像の「色彩」だったんです。

ぎりぎりリアルタイムで劇場では見る機会のなかった世代なんですが、そうです、そうでしょうといった色使いがふむふむとしみじみ味わえるのは至って自然なことでした。
*これを書いている今にして思えば、このマスタリングってどこがやったんでしょうね?(Dexなんとかとか色々クレジットは出てきます。個人的にはシネフィルのジングルはすごく好きです。これから観る作品にマスターピースや重厚感とかを冠している様で)
まぁ、購入当時はそんなことは思いもせず、世紀を超えた2大名作に大層感心し、大変楽しんでいたのです。
以下、この「サスペリア アルティメットコレクション DVD-BOX(5000セット限定)」はDVD BOXと表記します。

しかし、特にブルーレイ登場以降、メディア=規格の日進月歩に伴い、こっちは細部までくっきりだの、いろんなレストアの規格だの、色が潰れてるだの、上位メディアなのにだの… 何これ?というご意見がamazonレビューを賑わす様になり、まぁ購入する側としてはそれらをじっくり読んで吟味したりするわけですが、結局はいろんな作品を買い直していると先の様な意見を言いたくなることがその都度起きるので、いやはやこれは沼にハマらぬ様気をつけねば。

ということで、では「サスペリア」から行きましょうというかといえばさにあらず、「サスペリアpart2 : Profondo Rosso」から。
何故かといえば、アルジェントで一番好きな作品なのにそのグルグルの沼に「おっと危ねぇ」となったがゆえ。個人的体験の時系列で行きましょうと。


このところの映画館での映画体験、「ザ ショック」「オペラ座血の喝采」のアルジェント追体験があり、DVD BOXのリリース/購入から15年以上経ってるんですから、いっちょ最新版はどんなのになってんのかなと大アマゾンに分け入ってみたらこれがありました。ふ〜ん、ブルーレイだし「公開35周年記念究極版」とは何が究極なんでしょ?と期待は膨らみます。


中ジャケはイマイチですねー。
当時のチラシの復刻もついてますが、こういうことじゃない様な気がするんですけどね。
ま、早速観てみましょ。

ちょっと黄ばんでない?
「テオレマ」4Kレストアブルーレイ(クライテリオン盤)でも感じましたがなんなんでしょう?
4Kでレストアすると黄ばんじゃうの? んなバカな。。。(*後々これも変化しますが...)
しかもちらつきが目立って気になります。画面から離れていても気になるほどで、試しに近づいてみるともう、頭を抱えるレベルです。
そして妙に明るい。ゆえに超心理学会の会場も赤が強く出てしまい、背景の幕や椅子の生地が必要以上に赤いせいで、演台に掛けられた布が光っている様でもあります。かと思えば、ピンボールが転がってきて倒れるベッドのおもちゃの緑がひどくくすんでいたり、に対して毛糸玉や悪魔の人形は赤がまたもや強すぎて潰れ気味... 

アルジェントの作品は色が命といっても過言ではありません。
妙な懐古趣味で、色が飛んで抜けていようがフィルムが傷だらけでもそれが味よ、なんてのは特にアルジェントでは通用しますまい。
「サスペリア」ほどカラフルな作品ではありませんが、この作品も名シーンにはポイントとなる色があります。
題名になってる赤もそうですが、冒頭で殺されるヘルガウルマンのアパートの壁の、"メノラー"の間接照明の青、アマンダリゲティが殺される薄い水色のバスタブ、お湯が張られてもちゃんと薄水色が透けている。これらの「青」が自然に綺麗に出ているかどうかが結構なチェックポイントでしょうか... 

むうぅ、日本公開35周年記念究極版などというが、何が究極なのか。テレビ初放送の日本語吹替が入っているからか。確かに多くのアルジェントファンには大変馴染みのある吹き替えシナリオであろう。
民俗学図書館でペイジを破く際「悪いけどもらうぜ」という、オリジナルにはないセリフ、テレビ放送独自に追加された効果音も今や資料的価値はあるだろう。何度目かの再放送で、広川太一郎が、デイヴィッドヘミングスの役を真似て、タバコを咥えるが決して火をつけない仕草で解説していたのも懐かしい。
しかしだ、21世紀の世に「究極」を謳いリリースするのであれば、21世紀のファンへの捧げ物であるべきだ。21世紀のファンとは、世紀を超えて生きながらえた者ばかりを指すものではない。21世紀に新たにファンになる若い人へも、当時のオリジナルが持つポテンシャルを余さず伝える新鮮なクオリティこそが要なのだ。
その事に真剣に向き合わず、吹替を追加した、復刻チラシを放り込んだなどという、いわゆる『ケースキャンディ』といったものをあれこれするに留まってしまった。これの何を究極と言うのだ。
またもやお前は、一番大切な事を忘れてしまった「究極」の愚か者ということだ。良いか、士郎!!

いかんいかん!海原雄山が脳内に大魔神の如く祟り神として復活してしまいました。

ん〜とすると困ったものですなぁ。
日本盤ではこれが最新の様ですが、すでにリリースから10年たっちゃってるし、さらに新しいものはないのかな、「至高」のヴァージョンってないのかしらんと調べてみたら、こんなのが出てきました。


アルジェントの初期作を結構リリースしている、イギリスのARROW VIDEOというレーベル。
オリジナルネガからARROW FILMSがレストアしたとのこと。
ほほー、ならばと、日本語字幕などなくとも、セリフはだいたい頭に入っちょる!と気合いで申し込み、ロイヤルメールで届きました。

でもUHD!ウチの6千円のパイオニアのブルーレイプレイヤーでは再生できぬ。
背に腹はかえられぬ、えいやっとUHD対応ブルーレイプレイヤーをポチりました。
本当はいずれリージョンフリーのものが欲しかったのですがここはリーズナブルなやつで。。。
何故かと言うと、この手のマニアックなレーベルはまぁ普通日本のAmazonに登場しない様な、でもマニアなら絶対観たい作品なんかを最新レストアでリリースしたりするから気になってしょうがないのです。今後もUHDでどんなマニアックなタイトルが出てくるかとか。ブルーレイでは、モリコーネのテーマが有名なサスペンスもの「疑惑の上の女性の禁断の写真」とか「新殺しのテクニック 次はお前だ」とか、野良猫ロックシリーズなんかがARROWから出てますが、これがリージョン違いで日本では再生できなかったりするのです。
しかし、今後これらのカルト作群をUHD化する際には、人類遺産を遺すと言う意味で、リージョン縛りなどなしにしておやりなさい!

さてさて、ワールドワイドな題名"DEEP RED"を冠したこのディスク、果たして究極版を超える「至高」たるや?

はい、続きはまた次回ね。

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