先日ゴールデンウィークの真っ最中、朝も早よからテオレマを観てきました。
やはり好きな作品は大きなスクリーンで観てみたい。
んー、好きなレコードはオリジナル盤で聴いてみたいってのも一緒?
ここに書くのは、この作品「テオレマ」が好きすぎて(個人的映画史上TOP3のひとつ)色々検証してみたりした私の日常についてなので、ご覧になってない方は是非この機会にスクリーンでどうぞ。
難解だとか宗教的モティーフとかなんだかんだとついて回る「言葉」は横に置いておいて、「映像(映画)」で表現したパゾリーニの偉業を体験してください。
全国でしばらく上映するそうなので、上の写真にリンク貼ってます。
こじんまりしたスペースでスクリーンもソレなりの大きさだったのは想定内ですが、あれ?こんなに黄色っぽいとういうか。。。の画質だったっけ?
以前から持っているDVDとは少し印象が違いますね。
でも、せがれと2人で見ているフランシスベーコンの画集はくっきりとしていたし、何よりシルヴァーナマンガーノの美しいこと!
微妙な表情の変化で演じる表現の素晴らしさを、アイシャドウや口紅の鮮やかな色がこれまた際立たせています。こりゃやっぱりスクリーンで観るべきじゃ!と思った最大のポイントですね。
王女メディアもついでに鑑賞してさっさと帰ってきたのですが、どうにも画質が気になって仕方ありません。
いつぞやダリオアルジェントの「4匹の蝿」初DVD化記念上映を渋谷で観た際は、スクリーンに映る各色発色の良さにビックリしたのを、でも購入したDVDはそこまでじゃなかったのも覚えています。
帰宅後DVDを引っ張り出し、さらに、ブルーレイとか最新ヴァージョンのソフト事情も調べてみることにしました。
これが前から持っているDVDです。
早速観直してみましたが、発色は中々ですが精細度とコントラストが甘く、紗がかかったような映像とも言えます。観ているモニターの画質調整を色々やってみましたが、我が家のテレビには「コントラスト」の調整メニューがありません。ムゥウ。
して、現在の最新盤ソフト(blu-ray)がこちら。「クライテリオンコレクション」なんですね。
黒澤等の日本映画が好きな方にはおすすめかもしれませんが、海外作品には英語字幕は収録されていても、日本語字幕はありません。所謂「日本盤」として日本語字幕を追加したものも存在しないようです。
今回上映されているのは、このクライテリオンでレストアされたものを4kなんとかで2kどうしたとかの説明もどこかにありました。
スクリーンと家庭内モニターでの印象はまた異なると思いますので、手持ちのDVDと観比べてみたいですねー。ということでポチりました。
案の定日本語字幕はありませんでしたが、台詞も少なく、過去何度も観ている作品なのでまぁいいでしょう。
*amazonの商品説明には、「メディア形式:字幕付き」となっていますがあれはマズいでしょう。今や海外盤のソフトには日本語始め各国言語の字幕が収録されているものもあるこのご時世に、誤解を生む表記ですね。
さて画質ですが、先のDVDに比べて精細度はかなり上がっていますが、場面のトーンによっては全体的に粒子のようなものが目立ちます。
スクリーンで大変印象的だったシルヴァーナマンガーノの赤い唇や美しい肌の色は彩度が低めで、ハッとするほどではありません。
ここはまたもやモニターの画質調整をしてみましょう。
シャープネスをあまり上げずにノイズリダクションを「強」に。色合いもいろんなことやって何とか良くなりましたけど、なしてここまでやらにゃならんですかね?
スクリーンに感じた黄色っぽさとは、スクリーン上映ならではの彩度や色合いなのでしょうか?あまり詳しくないのでわかりませんが。
しかしそんなクライテリオン版ブルーレイもDVDにはなかったウレしい仕様がありまして、それは「英語音声」。
撮影時の演者の台詞はほぼ英語で、それをイタリア語吹替にしたものが上映版やDVD版です。
試しに英語音声にして、口の動きを見るとよくわかります。
この英語音声も、当時ゆえのアフレコですが、その生々しさ(各俳優本人の声?)が感じられるのがウレシイポイントですね。
イタリア映画にはこういった、撮影時には英語で演じられていてもイタリア語で吹替られた音声のみで公開、ソフト化されているものを目に耳にすることが多く、その強い発音を嫌う方もいらっしゃいますが、私は割と好きです。幼少のみぎりにダリオアルジェントの初期作品に刺激された世代としては、何観てもアルジェントの映画を観ている気分になるといったら大袈裟ですが、何か名物のようなもので、耳馴染みも悪くありません。
そしてさらにこの英語音声で気づいたことは、各シーンに必ず街の音が結構な大きさで聞こえていることです。しかも大抵車が通りをゴーっと走っている音。室内のシーンでも外から入り込んでくる音。
イタリア語版からも聞こえますが、これほどの大きさではありませんでした。
しかし、オリジナルの英語音声もアフレコしているのであれば、この街の音もわざわざ収録して加えているということでしょうか?
今、音楽もテレビも消してこのブログを書いていますが、開け放してある窓から聞こえてくるのは、確かに車やバイクが絶え間なく通りを走っていく音ですね。それほど都会でも田舎でもないところに住んでいますが。
映画は1968年当時が舞台で、「工業化も進んだ現代の街、郊外の音」もこの作品の要素のひとつということでしょうか。
観に行ったシアターではお土産コーナーでケネスアンガーのTシャツやブルーレイなんかも売っていました。
アンガーといえば、私の持っているDVDは発売当時(2007年頃)画期的レストアがされたもので、そのクリアな画像と蘇ったオリジナルの色調に大変ビックラこいたものです。
こちらはクライテリオンではなく、確か、UCLA Film and Television Archiveがレストアをしたと大いに話題になったのを覚えています。
オリジナルフィルムを丁寧に修正したとかの比較映像が作品のメニューに添付されていたり、"Rabiit's Moon"は2ヴァージョン収録されていて、ケチャやガムラン、フラミンゴス等が音楽に使われている1950年ヴァージョン(完成は1970年、1971年リリースの16分版)がお気に入りです。綺麗なブルーの色調と、え?これ最近撮り直したの??と錯覚してしまうような画像のクリアさは特筆ものです。Ⅰ巻もⅡ巻にもナイスなブックレット付き。今後このクオリティで再発やブルーレイ化されるかどうかはわかりませんので大切にしましょう。宝物ですね。
いつぞやご紹介した、YouTube上にあるとんでもないクオリティの「ジャッカルの日」レストア画像も、現時点で日本で発売されているブルーレイは、我が家のプレイヤーではもう一歩及ばずだったので、プレイヤーをグレードアップするべきですかね。
テオレマ始め、今後もいろんな企画で世の名作が蘇ることでしょう。
お家ではフォーマットの機能やくつろいだ環境で楽しめる良さを、スクリーンならスクリーンでしか味わえない良さを楽しむことにしましょ(来年あたり「2001年〜」の公開55周年でシネラマ復活とかダメですかね?テオレマもまたスクリーンに観に行ってみましょか)。
いずれにしても、『文化を遺し伝える』ということをプリンシプルとしてレストアやリリースに勤しんでいただきたいと希望致す所存です。権利とか何次使用とかの皮算用でなくって。
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