真夜中のランプ



んまぁ、何とカックイイ写真でしょ。

前ブログの最後の方、ビルローレンス追悼記事で書いた、最近出会ったビルピックアップ搭載ギターとはこちら。
1975 GIBSON L6-S MIDNIGHT SPECIAL

 してまた、レスポールジュニアの色違いの様なカラーリング。
でも、何で"MIDNIGHT SPECIAL"って名前なんでしょ?


しょれでは、L6-Sについて少々。

1973〜79年の70年代ドンズバに生産されたL6-Sは、もともとビルローレンスのデザインによるもので(生産ラインに乗る段階で多少のアレンジがあった様ですが)、もちろんそのピックアップもビルがこのギターの為にの設計したもの。

このサイト
http://8dayzaweek.com/GibsonL6S.html
によると、1973年にL6-S CUSTOMが、そして翌年からはDELUXEとMIDNIGHT SPECIALもリリースされています。

"CUSTOM"はサンタナでおなじみですね。

 
元はNatural Maple Glossカラー(いわゆるナチュラル)のボディにスリチンモイの写真と、アルバム"BORBOLETTA"のジャケ同様の蝶の羽根のコラージュが貼り付けてあります。

BORBOLETTA(ポルトガル語で「蝶」の意味)のジャケともインナーの袋とも違うパターンにも見えますので、ホントに蝶の羽根を貼り付けたのかも?

手前に座っているのはアルマンドペラーサですね。ハンチングがキュート。

サンタナをして言わしむれば、
『アルマンドは誰よりも速くしなやかにコンガを叩く。まるでチータの様だ』

言い得て妙ですな。昨夜初来日"LOTUS"映像を観て納得。
『チータイェラー』というのをご存知でしょうか?
"Yell"、つまり声援を送る人達のことです。

 色んなライヴ音源を聴いていると、決まったアーティストには、必ず同じ声援を送り続けている名物ファンの様な人達がいたりします。

80年代に、「何でそこまで太っちゃうかなぁ?」と誰しもが思ったミックテイラーがやっとこ表舞台に出始め、ジョンメイオールのツアーに参加したりしている頃の音源を聴くと、

『ミックテイラ〜』
『アビ〜ンミスュ〜』
と、曲と曲の間中叫んでいる二人組がいたりしました。

そして、名物イェラーとして子供の頃から耳に焼き付いて離れないのが、チータ、水前寺清子がテレビに映ると、大抵の歌番組は公開放送ですから、イントロが流れチータ登場するや否や
『チ〜タ、チ〜タ』の黄色い歓声。

今思い出しても、おそらく二人組ほどで、まさに金切り声の高周波で叫びまくるチータイェラー。
まるで60年代のレディステディゴー等のバンドブームから抜け出て来たかの様なヒステリックな熱の籠り様。

70年代の前半から80年代後半までリアルタイムで耳に飛び込んで来ていたあの声援は、チータの抜けの良い唄声とは常にセットで、無くてはならないものとなっていました。

 結局行けなかったのですが、いつぞやにチータが出演する東武動物公園のイベントチケットが手に入ったと、バンドのメンバーで『おおお、あの伝説のチータイェリングを生で聴くことが出来るぞ!』とたいそう盛り上がったものです。

残念ながら現在ではチータイェラーのあの声を聴くことは叶いませんが、今度リサイタル盤でも探してみようかしら。

えーと、BORBOLETTAのアルバムですが、イマイチ地味だとかであまり人気が高くないそうですが、私は大変好きですよ。

この音の臨場感、アイアートやフローラプリムも参加したと言うパーカッションのサウンド群も大変結構。
やっぱりアナログ録音はアナログで聴かなくっちゃ。

私の持ってるのは普通の日本盤を安く中古で買ったものですが、先日お茶の水のディスクウニオンで見かけた、『オリジナル、音が違う!』なんて値札がついていた2万越えのヤツは一体どんな音がするのでしょう?

おやおやそうでした、L6-Sの話でした。

 "DELUXE"はマイクオールドフィールドや初期プリンスが使用していたモデル。


L6-Sは手を加えたくなる素材なのでしょうか?

古原(初来日だかで自分の名前を日本語で書くとどうなるかを教えてもらい、そこいら中に「古原」と書きまくっていたとか)さんの方は、おそらくゼマティスによる彫刻プレートが貼り付けてあり、殿下にいたっては、この動画ではボディ縁のポチポチとピックアップ交換くらいですが、その後大胆にボディが変形されることになります。あんなにカットしちゃロクな音にならないだろうなぁ。

CUSTOMからの変更点は、弦が裏通しになったこと、ピックアップカバーがブラックに、エスカッションが3点止めになったといった所でしょうか。

そして、"MIDNIGHT SPECIAL"です。

ウチらの世代だと、やはりこの人が一番記憶に刷り込まれています。

でもほんの一時期のみの使用だった様ですね。

しかし、
何と動画がありました。


番組名も"MIDNIGHT SPECIAL"。
最後の最後でピータクリースはどうしちゃったんでしょう?

単体で音が聞こえるのはイントロくらいですが、無改造の音ですね。
そう、MIDNIGHT SPECIALはかなりブライトな音がするギターなのです。

エレキの基本はテレキャスターだ!と言ったとか言わないとかのビル爺のコンセプトを、顧問を務めていたGIBSONで結実させたのがL6-Sだとしたら、それも納得。しかもDELUXE、MIDNIGHT SPECIALは弦裏通し、MIDNIGHTはメイプルネックだしね。

そして"MIDNIGHT SPECIAL"の最大の特徴はなんとなんとの『ディタッチャブルネック』!
カラマズーの工場で作られていたというL6-Sシリーズですが、ネジ止めの『ディタッチャブルネック』の採用とはいささか職人軍団もショックだったのではないでしょうか。
ますますテレキャスター。

しかし、しかしですね、
L6-Sが気になりだして数ヶ月間、あちこちで3タイプを試奏したものですが、このディタッチャブルネックのMIDNIGHT SPECIALの生鳴り、響きのイイ感じったら。

当て推量で語ってしまうのもなんですが、セットネックって中がどんな具合にかちっとハマってるかなんて解らんのですよ。
レスポールにしても、50年代と再生産(60年代後半〜現在)以降ではその加工方法や精度によるであろう効果はまるで別物というのはあちこちで語られていますし、自分でも触れて確かめた実感でもあります。

ならば、ネジでギュウギュウボディに密着させているディタッチャブル方式って、昔々から刷り込まれて来た『セットネックよりかっちり度が劣る』という理屈は、実情を現しているものではないということですな。
そういえば、うちのテリー(67年)もサステインは良いし大したもんだぜ。む?やっぱりテレキャスター??

まあ、他にも色々理由があって結局MIDNIGHT SPECIALを選んだわけですが、このカラーリング。

真ん中がゴールドっぽいサンバーストですが、これ実は「シルヴァーバースト」。
ラッカーが黄ばんでこの色になってしまってるのです。


ピックガード下の部分は焼けが少なく、また、塗装が剥げたキズからは、下のシルヴァー層が覗いています。
よく見るとかなりメタリックな質感で、例えば50年代のレスポールのゴールドトップがブラスの粉末をラッカーに溶いて塗装していたのと似た様な方法で、何かしらの銀粉を吹き付けたのでしょうか?

さて、先にリンクしたL6-Sのデータ表によると、
http://8dayzaweek.com/GibsonL6S.html
MIDNIGHT SPECIALのカラーは5種類。
Ebonyは黒、Natural maple Glossはナチュラル、WhiteとWine Redは、各々のカラーフィニッシュに、キラキラのラメが混ぜてあるものです。ポールスタンレイのWhiteはこれですし、Wine Redのものは実物を見たことがあります。
とすると、表の中でカラーの表記が無いモデルが、このシルヴァーバーストになるのでは?

さあ、ここでやっと冒頭の"MIDNIGHT SPECIAL"の名の由来が明らかに. . . .
まあ、勝手な想像ですが。

"MIDNIGHT SPECIAL"とは、夜行特急列車。
レッドベリーのフォーク曲(CCRでも有名)、ジャズではジミースミス(同名異曲)。
レッドベリーの"MIDNIGHT SPECIAL"は伝承歌を元にしたプリズンものの唄。
真っ暗な深夜の牢獄に差し込んでくる夜行特急のライトの光。
あの光に乗ってあちきも何処かへ連れて行ってくんなマシ
という意味合いだそうです。
J.B.やジョージィフェイムでおなじみの"Night Train"なんて曲もありますな。
どこか遠くへ行きたい。

つまり、"MIDNIGHT SPECIAL"という名が象徴しているのは、真っ暗闇に浮かんでくる夜行特急のヘッドライト。
ね?このシルヴァーバーストカラーはまさにでしょ?
ゆえに、カラー表記(注釈)無しの"MIDNIGHT SPECIAL"がこのカラーのモデルだということが推量できるというわけ。
ちゅうことは、データによるとこのモデルは、MIDNIGHT SPECIALの総生産量2,077本のうちたった38本のレアモデルということになります。

しかし、同様のシルヴァーバーストはCUSTOMモデルにも存在してるし、リイシューも出ました(バーストの形状もヘッドもブリッジも何しろピックアップも全然ちがう!)。
それはL6-S CUSTOM "MIDNIGHT SPECIAL"とはならないのかとか、表にはありませんが、DELUXEモデルのシルヴァーバーストの写真も見たことがあります。

少々ナゾは残ってしまいますなぁ〜。

何はともあれ、ご縁あって出会ったMIDNIGHT SPECIAL。
スケールはGIBSONの定番、24 3/4ですが、24フレットなのでやたら長く感じられます。
そして、弦裏通しにブリッジとの角度とヘッド角17度のせいか、ウチにあるギターの中で一番テンションがキツいっす。
おまけに、フレットはワイドなのですがかなり低く、塗装が乗ったメイプル指坂ですから正直言って超弾きニクイっす!!

しかし、このギターの音は他に類を見ないものと言ってもいいくらいの素晴らしいものですので、大変気に入っています。
プリンス殿下ほどではありませんが、地味にパーツ交換などしておりますので、今後も登場すると思いますよ。

うわぁ、いつの間にかまたこんなに長くなってしまった。なんででしょ?

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