男はやっぱりストラトかしら?13



イイなぁ〜。

モリコーネで3本の指に入る大好き曲。

ゆえにサントラはもちろん、この映画のDVDも日本版が出る前から海外版を探して手に入れたりしてました。
その後めでたく日本でもリリースされましたが、あっという間に廃盤。

すでにプレミア化していますが、つい先日観ようと思ったけど出てこない。
行方不明の他のDVDもろとも、大規模なお片付けと捜索を行わないといけませんね。

さて『分離の良さ』についての続きです。

当ブログへのアクセス数で3番目に多いのが『グローブ屋の諸君の養豚場』の回で、レスポールのクルーソンvsグローヴァー論争に一石を投じたとかそんなことは思っていませんが、その中で『音の暴れと特徴的だったミッドレンジの紙一重も適度に均された〜』とあるその要因として、ヘッドの重量増しがあったわけです。

ついでに2番目にアクセスが多いのがおかげさまでこの『男はやっぱりストラトかしら?』のシリーズ。
ではさて1位は何でしょう?

話を戻すと、ヘッドの重量を変えると弦の響き、音の分離感やミッドレンジに変化が起こるのは知られたことであります。

では、せっかくここまで来たストラトもひとつその首実検にかけてみても面白いかな?と、またよからぬ虫がうずき出しましたのでやってみました。

現在付いてるペグはご覧のロトマチック。
なので先ずは重量増しを試してみるとなると...

以前、MIDNIGHT SPECIALで試してみた真鍮板の余りが出てきたので何か作ってヘッドに付けてみましょうか。

そういえば昨今ヘッドに付けるといえばチューナーですが、ヘッドにチューナーってねぇ。

私はそもそもチューナーが嫌いでありまして、13歳の頃からず〜っと音叉。
しかも最近はピアノ。
我が家はこれ。



こちらにも色んな物語があるのですが、それはまたいずれの機会に。

でも何かチューナーを1台といえばやっぱストロボチューナーかなぁと、一時期本気でCONNのを探し回っていたこともありました。

HALみたいなコレとか


もそっと秘密兵器感を出したければこっちとか


左側に電子ロックのプッシュボタンみたいのが付いてますが、これ実はエレクトロヴォイス社製のマイクなんだそうです。
至れり尽くせりですね。

え〜、チューナーでもファットフィンガーでも、ギターのある意味「顔」であるヘッドに何か「治療具」みたいなのが付いたままになっているのに物凄く違和感を覚えるわけです。響きとか音程とかの改善という処置目的があるのは解っていますが、「いつになったら完治するのですか?」「大変ですねぇ」と言った印象を受ける佇まいなのはどうなのかなぁ?

それでは首実検どうしましょか?

顔(ヘッド)の表ではなくて、裏側にステッカーをいたずらに貼ったような感じにしてみようかと、3mm厚の真鍮板を切ってヘッド裏に貼り付ける作戦で行こうかなと思いつき、ただ丸とか三角とかに切った黄金色の物体を貼り付けても面白くないので。

では絵柄は?


ということで最初の動画 "Lizard in a Woman's Skin (Una lucertola con la pelle di donna 邦題は「幻想殺人」) "
のポスター絵柄にしてみよじゃないかとなりました。

ネットプリントって便利ね。

家庭用のプリンターだとインクジェットだから色あせしやすいし、水で滲んじゃうし、いかにも紙だし、でもネットプリントはコンビニの複合機:レーザープリンターで印刷するからしっかりした質感になるもんね。

ほれどうだ!


貼り付けは両面テープ。

何が貼ってあんの?と近づけば分厚いブラス。何じゃこりゃ?というのもまた楽し、かな?

で、どうなったかというと、
んー? 前回のコンデンサー選びの際にインだけど分離が良すぎちゃってのマイカ組を思い起こさせる各弦の分離の良い音。

あれっ?これ確かに悪くはないけれど、結構元の木阿弥感が勝っちゃてると感じるゾ??

う〜んそうですね。

ストラト1本で何でもござれ!とするならばこれでもいいかもしれませんが、『ストラト向きって何ぞ?』と感じてサークルDコンデンサーで『ストラトらしさ』を取り戻したこのギターにはあまり合ってないかな?

むしろもっとストラトらしさ、しっかりしたネック&ボディの鳴りに裏打ちされた歯切れの良いシングルコイルにはもう少しミドル中心の押し出しがあっても良いのでは?

ならばならば、反対にヘッドの重量を減らしてみてはどうか?

えっ?じゃあクルーソンタイプ、このギターで言えば元々付いていたオリジナルの『Fキー』に戻すってこと?

レスポールの時と逆をやるの?

そうです。面白いじゃないですか。ヌハハ!

しかし、ハタチそこそこのナマガキがペグ交換した後そのオリジナルのFキーをどうしたかなんて覚えているはずもありません。

捨てちゃったような気もするなぁ。

では現在手に入るものの中で最良はというと?
こちらにしました。


"Schaller Original F-Series GOLD"です。

このギターのオリジナルだったFキーは違うかもしれませんが、いつ頃からかSchallerはFenderのFキーの生産を請け負っていたそうな。

しかし現行のFenderブランドで売られているFキー(Fマーク入り)はアジアの別会社製だとか。
ならば今もMade in GermanyのSchallerがインじゃん?FじゃなくてSマークだけど。
[追記]
とかこの時は言ってますが、装着後しばらくするととたんに動きが悪くなり、結局現行Fキーに交換したことを追記します。


ゴールドとクロームくらいかと思ったらこんなにヴァリエーションがあるんですね。

そういえば、うちのパロミノについてるFキーはニッケルメッキだもんね。ペグヘッドは白いプラスチックだけど。

ということで、Schaller Original F-SeriesのGOLDを入手して取り付けることに。

メーカーサイトには各寸法入りの図面がありました。

一つ心配していたのは、表から差し込むブッシュのサイズがロトマチック取り付け後だとすでに穴が広がっていてブカブカなんじゃないかと。
して先ほどの図面を見れば、ブッシュの差し込み部の外径は10mm!
これってすでにコンヴァージョンブッシュと同じ太さってこと?
ヴィンテイジのみならずギター界全体で言えばロトマチックその他が幅を利かせているので、即対応できるためということでしょうか。
クルーソンやヴィンテイジFキーの細い系のブッシュが付いたヘッドでは、却って穴拡張をせねばならぬということで、これなかなか面白いですね。

『うちのFキーは単にヴィンテイジの補修用のために売ってるんじゃないよ。いろんなギターに取り付けるために仕上げのヴァリエーションだって色々揃えてんだから』

ということなのでしょうか。

 結局、ロトマチックが付いていたこのヘッドの穴を見てみると、裏側からはテーパーリーマーでぐりぐりやった無残な跡が見受けられたものの表からはほとんど手付かずだったので穴を広げてあげないとということで、『グローブ屋の〜』でご紹介した『ステップドリル』
の3/8''(9.53mm)でグリグリやってみました。

10mmを差し込むのに10mmで開けたらそりゃぶかぶかでしょと思ったのですが、3/8''(9.53mm)ではとてもキツキツで入らない!

プラスティックハンマーでガンガン叩いても入っていきません。やっぱ硬いメイプルなのね。

無理してヘッドを割っちゃったら元も子もありませんので、クランプでぎゅうぎゅう押し込むことにしました。

カヴァを取ってある方をブッシュ側に、首がフレキシブルになってるカヴァ付きの丸い方をヘッド裏側に当ててギュウギュウ拷問の様にネジ込んでいったら見事キレイに入りました。


さあ、いかがでしょうか。


ずらっと並んだ平行四辺形と"S"マーク。美しいですね。

リプレイスのネックにFキー付けるとペグ間の間隔が合わず平行四辺形を削るなんて聞いたことがありますが、今回そんな必要は一切なく、ミッタリキレイに並んで装着できました。
メーカーサイトに
"Not like the original - it's THE ORIGINAL!"
"Original look and specs with cutting-edge Schaller technology"

Exact replacement machine heads for Fender guitars with original dimensions in tried-and-tested Schaller quality.

と能書きしてある通りの自信はダテじゃないということなんでしょね。ブッシュ穴は要加工だったけど。

そうそう、裏側からネジどめの際に下穴を開けなくっちゃかなめんどクセーと思って試しに付属のタッピングネジをいきなりヘッドに押し付けてグリグリやったらちゃんと入って全部ネジどめできました。
あれだけ硬いと思っていたメイプルネックなのにね。
ここでも『グローブ屋〜』の回でレスポールのヘッド裏穴加工を行った際の、「加工しやすいけれど大変固い素材」というのがふっと思い起こされました。この辺が良いネックのシミツなのかもね。


ゴールドで白いペグヘッドがあればなぁなんてことも思ってましたが、Fキー独特のこのペグヘッドの形状でゴールドってのもなかなかイイじゃないですか。その下のスッと伸びたシャフトといい、首が細いのは美人の証拠ですな。


真ん中の4弦のブッシュはギュウギュウが過ぎたせいかメリ込んでしまってますね。
でもシンプルに収まっているこの佇まい、いいですね〜。
それと、Fキーの何と言っても特徴はこのペグポストのスリット。
弦の先っぽがピラピラしないのは大変な思いつきで、大好きなんです。
でもひとつ難を言えば、ぺグポストを真上から見てこのスリットの中心に弦の先っぽを差し込む穴が空いているのですが、この穴径がオリジナルのFキーに比べて小さい。

笑われちゃうかもしれませんが、ティーネイジャーの頃、街のレコード屋さんで買ったヤマハの弦をペグに合わせてカットした時に巻き弦がぴろぴろ〜っとホドケてしまい、あまりにショックだったので訳を話したらレコード屋の優しいお姉さんは新しい弦に取り替えてくれたのですが、それ以来のトラウマで、巻き弦をカットする時にはカットする場所で一旦弦を折り、その曲がったところの真ん中をカットしてというのを何十年今だにやっているんですけれど、そのちょい曲がった先っぽが、このSchallerのポスト穴だと6弦なんかムリ!とても入らないので、折って切ったのをまた伸ばしてなんてして入れました次第です。

さぁて、では、ペグ交換:重量減による変化の結果は如何に?と言いますと、

素晴らしっ!

見事にミドルが乗っています!『しっかりしたネック&ボディの鳴りに裏打ちされた歯切れの良いシングルコイル』の音の上に。

ミドルが押し出されたとか、イコライザーで持ち上げた様なではなく、あくまでミドルが素敵に乗っているイメージの音です。

ざっくり言ってしまえば、『グローブ屋の〜』で行ったあっちの理屈がこっちで覆されたということではなく、『適材適所』です。

ストラトの、特に70年代のシャープな音に、あくまでストラトらしさであるきらびやかな色気と、存在感を誇示する中域が品良く相まって、ここに至って完成したのを実感しました。

でも、フレットをちゃんとしてペグをFキーにしてコンデンサーをサークルDにして... な訳ですから、出荷当時の元に戻った、元のポテンシャルを取り戻したと言えるのかもしれませんね。

そうそう、ついぞ書き忘れていましたが、このストラトはボディはめちゃ軽、総重量も3.4kgです。ポットデイトから'76年に出荷されたものだとは思いますが、オリジナルの3点止めネックプレートのシリアルは74年、ネックエンドのスタンプは75年。

70年台後半からストラトのボディは重くなり〜という記述をよく見かけますが、やはり個体差や、組み上げられるボディ、ネックには年度のズレも結構あるっていうことでしょうか。

この後、トレモロユニットのスプリングを再調整してますます弾くのが楽しくなりました。

一番古い付き合いのギターが元気でキラキラした姿(音)でいてくれるなんて嬉しいじゃありませんか!

このストラトの連載も長くなりましたが、そこに書いてきた様にしばらく弦も張らず放っておいたり、ネックが生き別れになって部屋の隅でひっそりしていたり、ずいぶんつれない仕打ちをしてしまったなぁと反省しきりで、それでも本腰入れてこの度再生できたのは、Musical Boxのオールドヘンリーじゃありませんが、"Why don't you touch me? now, now... "なんて叫び声が実はずーっと聴こえていたのかもしれませんね。

コメント